キツネの神様の頼みごと その2

私の仕事は、自動車保険や火災保険といった損害保険から
生命保険の証券診断、保険設計まで
その上、事故処理の専門資格まで持っているというプロの保険屋です。

どこから見ても現実の世界にどっぷりはまり込んでいるその裏で、神様の仕事の依頼を受けています。
保険の仕事で関わっている方々は、ほとんどの方が誰も私の本当の姿をご存じない。
しかし、数多くの事故に関わっていると、実際、事故の原因に明らかに「もののけ」が関わっていることが多いのも事実です。

訪問先は瀟洒なお宅。
お家のご主人の小谷さんは裁判官のお仕事をされています。
依頼主は奥さまで、今回はご主人と息子さんの生命保険の見直しを頼まれています。

ヨーロピアン風の飾り付けがある柵の門柱に取り付けられたインターホンを押して要件を伝えると 優しそうな奥さまの声が返ってきた。

訪問予定時間ぴったりに到着した私を迎え入れながら
「いつも時間に正確でいらっしゃるのね。本当に信頼がおけますわ。」
優しい笑みを浮かべて私を中に通されました。

家の中はいつもながら綺麗に掃除されている。
床はピカピカに磨かれており、ちりひとつ落ちていない。

仕事柄いろんな家を訪問する。
今回の訪問先である小谷さんの家のようにいつも綺麗に片付いている家もあれば
床の上一面が物置き状態の家もある。

慣れもあるのだが、私自身通された部屋の状態がどうであろうが全く気にならない。
しかし、部屋の状態が雑然としている家は、住んでいらっしゃる方ご自身の頭の中も整理が出来ていないことが多い。
そこで、保険の説明もその点を理解したうえで、一つずつ要点をまとめながらお話しする。

小谷さんの場合はその逆で、異常なほどに片付いている。
2か月前にお伺いしたときと同じ部屋に通されたのだが、家具の位置からカーテンの色まで変わっている。
掃除が趣味の奥さまは、毎日隅から隅まで掃除をされる。
ほんの小さでも、ホコリでも目に付いたら掃除をせずにはいられないという。

そして長くても3カ月に一回は家具の大移動をされる。
家具や家電の下の埃が気になってしょうがないそうだ。
信じられないことにその大移動を奥さま一人で実行される。
ご主人は飽きれて好きにさせているそうだが、話しぶりから、ご主人に対しての奥さまの不満が見え隠れする。

しかし綺麗好きとはいえ、何回訪問しても毎回初めての家にお伺いしているような緊張感を感じる。
たぶんご主人もこれでは仕事場で精神を使い、家でもゆっくりはできないのではないかしら、人ごとながらご愁傷さまです。

やはり何事もほどほどが肝心です。

それにしても今回は今まで以上に、家中に異常なまでの張りつめた緊張感を感じる。
奥さまの掃除好きだけが原因ではないようだ。

奥さまがキッチンでお茶の準備をしている間に、家の中の気を診断してみた。
すると二階の一室だけ強力なシールド(結界)が張られており、簡単に侵入できない。
かなり強い力だ。中途半端な気の送り方では破れない。

「おまたせしました」
奥さまの声でそれ以上の侵入を断念して、本来の仕事に戻った。

問い面に奥さまと向かい合って、妙なことに気が付いた。
奥さまのメガネがいつもと違うのだ。いつもは普通のメガネなのだが、今日のメガネはパープルの色が濃く付いている。
「メガネを変えられたのですか」という私の質問に、なぜか少しあわてたように
「いえ。実は昨日二重瞼の手術を受けまして、二、三日瞼が腫れますとのことでしたので、色の濃いメガネをかけておりますの」という返事。

なにやら取ってつけたような返事に不思議に思いながらも
それ以上の答えを嫌がられている様子に、深く追求するのをやめた。

キツネの神様の頼みごと その3へ

体験一覧へ戻る


スピリチュアルカウンセラーYUMI